Rotary9月号
やってみようと決意すること
果敢な努力と共にロータリアン達はラテンアメリカの子宮頸癌撲滅を目指し活動しています。
リチャード・ゴッドフリー
私たちは旧式の赤いジープでアムボロ国定公園のきついカーブを通り抜けています。運転席にはユアン・キャルロス、後部にイルマ、キャロル、ミルナ、助手席にショットガンを抱えた私がいます。山々は私たちよりはるか高くそびえ、ジャカランダやオーク、流れるような灌木の群れ、それらが緑のモザイクのように色濃く目に入ってきます。
ユアンは2レーンのハイウェー沿いに歩き回る雌牛や犬をよけています。その一方積雲は頭上に漂ったまま、この2年間雨を降らすのをしぶっているかのようです。2022年12月私たちはボリビア最大の都市サンタクルーズに向かって運転していました。約3時間前には落ち着いた雰囲気のバレグランデを後にしています。
地元の病院チームと協力して、子宮頸癌を撲滅する大がかりなプロジェクトを始めました。 それはラテンアメリカの他の場所でも実地を望まれるプロジェクトで、ボリビアは2020年に1,985件の新しい事例と1,054人の死亡を記録しており、南米で子宮頸癌の最も高い発症率を抱えています。サンタクルーズの街だけでも毎年病院に訪れる90人の女性が、診断遅れにより予防可能な疾病で亡くなっているのです。
世界的には341,000人が毎年1分半ごとに子宮頸癌で亡くなります。たいてい死亡者は低収入国から報告され、癌が広がったことで子供たちや配偶者を残して去っていきました。等しく重要なのは罹患した女性が避けられない結論に向かう体調の中、経験する苦しみの程度です。それが最新の検査と治療技術をボリビアにもたらすことに傾注する理由であり、それがあれば医者と看護師が使い方をすばやく学べます。
人的熟練と革新的な医学を組み合わせれば、一日で600人以上の患者を検査し40秒で早期癌を治療できるのです。私たちの目標は7,500人の患者を検査することで、そのプロジェクトは完成に3年はかかるでしょう。しかし故ジョン・F.ケネディ元米国大統領が力説し、時に引き合いに出される格言があります。「全ての成果は、やってみようとする決意から始まる。」サンタクルーズに到着後、ジョージ・メヘディに会いました。彼は地元小児科病院の外科部長であり、ウルバリRC会長でもあります。
メヘディは病院見学に私を連れて行きます。その後、実施を望む大規模検査治療プロジェクトに必要な新設備導入承認の政府支援文書を受け取るため重要な会議をしました。政府承認は不可欠であり、不安を隠せませんでした。しかしメヘディは自信ありげな微笑みで皆を安心させる方法を身に着けていました。会議でボリビアの厚生大臣は、国内への医療器具受け入れ許可書面に署名できることをうれしく思うと言いました。そして大臣がそう伝えた時メヘディの目も輝いていました。この仕事は私にとってどのように始まったのでしょうか。
2007年私はカリフォルニアの患者対応に追われる病院外科の癌専門医でした。定期的にみている患者が、3回目の困難な癌手術の後、一緒にロータリーの例会に来てほしいと依頼しました。辞退しましたが、彼は繰り返し招待を願ってきました。ついにその粘り強さに根負けして出席することに同意します。そして私の人生は変わったのです。
フリーモント州ナイルズRCでは、今までかなえられなかった友情とインスピレーションが待っていたことを知りました。ふり返ってみたときこう悟ったのです。約10,000人の癌を取り除いたけれど、(外科医の経歴では珍しくないことです。) そもそも癌予防がずっと望ましいことではないかと。ロータリーでの活動はそれを世界中で可能にしました。ここにはその成功したプロジェクト例があり、成功に繋がる革新的な医療技術と治療法があります。
カリフォルニア州5170地区とPINCC(子宮頸癌予防に焦点を置く非営利団体)は、グアテマラでの4年計画を達成しました。そこではHPVヒトパピローマウイルス遺伝子診断の新技術を導入したのです。HPVは子宮頸癌の主要な原因です。さらに、私たちは新しい治療方法をトレーナーに伝授しました。その略称VIAによって知られる基礎的手順を使って、病院を訪れる女性達を3年かけて検査しました。
検査鏡、検視ヘッドライト、酢酸の使用で、臨床医は癌の初期徴候を視覚的に識別できます。その後熱融除材と呼ばれる新しい装置を使用して、1分未満で早期癌を治療できました。単純に見えるでしょうか。次の知らせは事態を更によくします。2022年には女性が自宅で自身を検査できるHPV遺伝子スクリーニング技術を導入しました。大多数の陰性の女性は、少なくとも3~5年間再検査する必要がないでしょう。
この検査法は女性には容易となります。病院、臨床医に向かう必要がないからです。病院は陽性患者のみを検査すればいいのです。医療技術の目覚ましい進歩は、グアテマラで導入しボリビアで始めた同様のプログラムで素早く事態を良い方向に向かわせることができます。9月に同様のプログラムをネパールへもたらしました。
更に5月にはオーストラリア、メルボルンのロータリー国際会議でエジプトでの「子宮頸癌撲滅のための結束」が、ロータリー大規模プログラム補助金の第3回受領者として発表されました。ロータリー財団より200万ドルの補助金が贈られたのです。グアテマラと同じく、ボリビアのプロジェクトはスペイン語で行われます。私のスペイン語学力はまあまあです。しかし多くの言語で活動し強い繋がりを構築しようとすることは、ロータリーならではの経験です。
ボリビアの女性達は少しゆっくり話をしてくれ、非常に忍耐強い印象を与えました。現在唯一可能な主要癌撲滅のプロセスを、彼女達がリードしようとしていることが分かります。男性達も等しく決意しています。 また、そうであるべきです。HPVは男性を蝕むいくつかのタイプの癌に関連しています。そこには頭頸部癌を含むいくつかのタイプが含まれます。頭頚部外科医は、私たちがハイリスクのHPVを探れるかどうか尋ねました。
私たちが使うAmpFireという設備は、口腔サンプルによってウィルスを検査できます。また、それはCOVID-19を含む多くの感染症にも適用できます。より大きな問題は、子供達への大規模なHPV予防接種が、他の種類の癌にある程度の効果があるかどうかです。そしてある医療データはそれを示唆しています。そして次のことも安心できる材料となります。
ワクチンがずっと有効で廉価であれば、最終的に低収入の国々で少女だけでなくすべての子供に提供されるのです。グアテマラ、ペテン地域での活動は、喜ぶべき瞬間を分かち合いました。ボランティアチームはティカルとヤクシャの古代ピラミッドへ小旅行をし、ペテンイッツァ湖に泳ぎ、チピコ料理を楽しみました。ティカルペテンRCの例会に出席し物語と笑顔を交換し、メンバーと共有した友情に喜びを得ました。
長い日々をファブリツィオ・パルマ医師と力を合わせて活動した病院で過ごしました。新しいセルフテストテクニックは患者や私たちのチームにとって天の恵みです。しかしうだるような暑さに湿度の高いクリニックで多くの患者を検査し優先順位をつけた後でさえ、女性達は診断を望んで、心配そうに待っていました。それでも救いはグアテマラの活動の結果が公表されたことです。私たちが新しい地域に移った今、パルマ医師はプログラムを独力でリードしています。
しかしこれらの新しい技術で、異なる国々のパートナーと協力し、求められる迄変化を押しつけて無理に推進しようとしないことが必要です。数年前に全てのボランティアが次のことを知ることになる平和部隊で私も学びました。「あなたが教えること、それが新しい言語であれ、新しい文化であれ、人間性への良き理解であれ、それ以上のものを異文化から多くのものを受け取ります。私たちが提供するものすべてのもの以上のずっと大きな贈り物なのです。」
このことを書きながら、ボリビアへの3回目の旅を楽しみにしています。赤いジープへ再び乗り込み、ヴァッレグランデに戻るつもりです。ユアン・キャルロスに会えることも楽しみのひとつであり、アチャチャイル(卵の形に似たフルーツで甘いマンゴーベリーオレンジ味がする)にかぶりつけることも待ち遠しいものです。
この活動を可能にするシカゴ、ロサンジェルス、オークランド、サンフランシスコ、シアトルRCには感謝しています。この全てのプロジェクト創始者は、サンタクルーズのウルグアイRC。イルマ・ダニー・ロハスアルテガ、キャロル・ジュヌビエーブヴィスカラ・ギリェン、ミルナルースクラウレ・デトレド、その他の会員は、全国に渡って時間の広がりの中プロジェクトをリードしています。
ボリビアはすべての国のように、子供にすべて免疫を施す挑戦に直面しますが、十分なワクチンを提供する資源を欠いています。ロータリーのポリオプラスプログラムの初期には最初のワクチン接種活動への資金提供に困難なプロセスを経ています。 しかし今日プログラムは、ポリオを根絶する究極のゴールに迫っています。同様にロータリーが子宮頸癌に同じ影響を及ぼせる時を夢見ることができます。
実際、その考えは夢を越えたものになっています。ヘルスケア・ワーカーに携わる人達もどんどん増えて、世界中のロータリークラブによって支援を受け子宮頸癌に立ち向かっています。救済基金、新しい技術、廉価なワクチン、勇敢なボランティアを見出すことができるはずです。とにかく、私たちはトライを決意しただけに留まりませんでした。これからもトライし続け、最終的な成功を目指しているのです。
元癌外科医、熱意ある養蜂家、小説家、リチャード・ゴッドフリーはカリフォルニア州ナイルズ(フリーモント)RCのメンバーです。
翻訳 津坂守英@名古屋城北
名古屋城北ロータリークラブ NAGOYA JYOHOKU 国際ロータリー第2760地区
例会日 火曜日 12:30~13:30
【事務局】
住所 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-16-16 チサンマンション栄514号(2024.8.20移転)
TEL 052-201-1141 FAX 052-201-5679 ( 10:00~16:00 事務局 受付)
E-Mail t-jrc@ceres.ocn.ne.jp
【例会場】ヒルトン名古屋
住所 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-3-3
TEL 052-212-1111