Rotary4月号
ご乗車願います!
輸送専門家は異常気象解決に向かうルートを地図に描きます。 その考えは正に印象的です。
ロッド・ディリドンSr.
母なる山が雪の衣を失いつつあることにショックを受け、それが行動のきっかけになりました。1990年代の初めにカリフォルニア州ダンスミュアに住む両親のもとに里帰りした時のことです。そこはシャスタ山ふもとにあるアッパーサクラメントリバーバレーの小さな町で、「マザー」は子供の頃からその雄大な山に与えた名前でした。
幼いころに比べ氷河と山頂の雪の劇的後退にすぐに気づき、父はスキーシーズンがずっと短くなったと嘆いていました。その頃私は50代中頃で北カリフォルニア、シリコン・バレーで地元州政府に所属し、大量輸送システムの設計および構築の専門職についていたのです。しかしシャスタ山の後退する氷河を見て、否定できない劇的変化の理由を求めざるを得ませんでした。
1938年初頭に英国科学者ガイ・カレンダーは、大気中の二酸化炭素の増加傾向が地球温暖化を導き、今なお続いていると実証的に証明しました。更にその後十数年間、カレンダーと他の環境科学者は、その増加原因を人間の活動に直接関連していると発言しました。
ただ一つの問題は、わずかな人々が科学者達の発言に耳を傾けただけで、真面目に受けとめた人は多くなかったことでした。しかし雪の後退したシャスタ山影に立ちながら、地球温暖化の恐ろしい警告に耳を傾けざるを得ませんでした。世界を回りながら講演を行う中で、気候変動の影響が地球上の山々だけでなく海洋、森林、湖、川、内海に及んでいる痕跡を目の当たりにしたのです。
私自身の経歴から、もうひとつのことに気づくことができました。高速鉄道が発達し電力供給システムのネットワークで結ばれた国々では、劇的に二酸化炭素放出量を削減する有効な方法を見つけていたのです。同じ頃、輸送手段当たりの炭素放出量を評価する研究が目につくようになりました。
研究者達は、ガソリン動力の自動車、バス、トラック、航空会社が1マイル当たり1座席当たり最大の二酸化炭素を放出することを知りました。一方電力駆動の高速鉄道、地下鉄、電気自動車は、指数関数的に非常にクリーンといえます。
持続可能な公共交通機関は二酸化炭素放出量を世界的に削減してきました。知見を得たことで、気候変動への対策として持続可能な輸送に注力することに決めたのです。1990年代の終わりに家族は電気自動車だけを使用し始め、更に他の気候変動解決策に気づき、45枚のソーラーパネルを屋根に装着しました。
私たちは2006年公開のアル・ゴア前副大統領制作のドキュメンタリー「不都合な真実」が、気候変動危機を公共に認識させる契機となったことを評価しています。そして、スピーチの焦点を電力駆動の公共交通機関にシフトする重要性に置くことにしました。
2017年頃不躾を許してもらえるなら、ニューヨークタイムズは私を「ベイエリアの公共交通機関の必要性に尽力した人物」と評しました。その頃1971年以来クラブメンバーの私に、サンホセRCは卓話を要請してきました。その後数人の若いメンバーが子供にとって良き将来とするために活動すべきだと同意してくれました。
そこで私たちは行動を起こし、気候変動にコードレッド(緊急事態)を宣言し、気候変動委員会を立ち上げたのです。気候変動対策は、新しく入った若いメンバーを引き付ける磁力となり、シリコンバレーを含む5170地区ガバナーが、地区の50以上のロータリークラブに気候変動対策を広めるように要請しました。
それ以前も国際ロータリーは環境持続性ロータリアン行動グループを設立し、気候変動への行動に特化していることが、特に若いロータリアンにとって魅力的であることが認識されていました。高速鉄道は、気候変動への世界的救済策の基本となる構成要素と位置づけられています。
それは私たちが行わなければならない未来への投資です。ふり返れば高速鉄道と持続可能な将来に果たすべく、自分のDNAに導かれたように思えます。鉄道列車乗務員として働きながら、大学を通じ自らの道を進みました。
サンタクララ郡監理委員会のメンバーとして、5期連続で議長として9つの鉄道プロジェクトを指揮しました。20年後、任期制限で引退を余儀なくされた時、シリコン・バレーの歴史的な主要駅はサンホセディリドンステーションとして再構築されていたのです。
仕事の多くは、ほとんど記憶に残っていないナショナルシティーラインズの共謀によって、地元ばかりでなく国全体に及んだ損害の回復に専念することでした。ナショナルシティーラインズは、ゼネラルモーターズ、ファイヤストーンタイヤ、カリフォニアスタンダード石油、フィリプス石油等によって設立された1930年代創業の会社で、市の路面電車網を買収し次々と廃業させていきました。
その目的は線路をアスファルト路面にして、トロリーバスに替えることでした。それは全て自動車とガソリン販売推進のためで冷徹な策略であり、一部は最終的に不法行為と認定されています。事実ナショナルシティライン幹部は、1949年にトラスト規制法違反の有罪判決を受けました。
それまでに急速な都市・郊外の拡大化の為、多くの町で車所有が必需品になっていました。ジャーナリスト、ジョナサン・クウィニ―はハーパーズマガジン誌で共謀事件について1981年にこう述べています。「多くの場所で公共輸送機関は自然消滅したわけではなく、廃止させられています。」
クウィニーは次のように結論を下しました。「輸送機関の共謀者が行ったのは、大量輸送機関を破壊することでした。今日残っていれば何百万もの市民に役立ち、皮肉にも外国産原油依存減少から国家的安全保障に期するはずのものを。そして彼らは自分達の利益のためにしたのです。」
不正暴利行為によるダメージは警報を発していました。当時の既存鉄道線路を取り除くことによって、市内高速鉄道網の大規模な普及を阻害したのです。それは今あれば、恐るべき地球史上六番目の大量絶滅を防ぐ重要な取り組みになるはずでした。
地質学者は、大気中の過剰二酸化炭素は地球上生物が大量絶滅に至る主要原因となるだろうと警告しています。6600万年前に恐竜がほぼ絶滅しています。環境持続可能性ロータリー行動委員会および5170地区気候変動行動会議代表として、世界中のロータリアンや他団体とのテレビ会議で以下の点を強調しています。
まず科学雑誌で公表された研究の99.9パーセントは、人類による気候変動は制御不能であることを支持する事実を指摘します。客観的に科学者の間で、気候変動に関する議論はもはや存在しません。専門家筋の研究のみを引用して、温暖化となる二酸化炭素および他の温室効果ガスの驚異的増加、グローバルな気温の絶え間ない上昇に関する統計を提供します。
次に「私たちは臨界点に近づいている。」という国連事務総長アントニオ・グテーレスの2023年3月の宣言を引用します。それは生態系の破壊、海抜0m地点にある国々の消滅、破壊的な気象、致命的なパンデミック、大規模な難民等、想像不可能な状況に結びつくグローバルな気温上昇を越える時点を指します。
サンフランシスコでの最近のアジア太平洋経済協力会議では、将来に向け中国およびアメリカ(世界で最大の炭素排出国)が、気候改善で直ちに主導権をとらなければならないと確認されました。その一環として、ナショナルシティーラインによって撤去されたトロリー・システムを復活させる必要があります。
さらに通勤列車システムを拡充、電気による自動車、バス、トラックへの切り替え、持続可能なソーラー、風力、地熱エネルギーの新たな供給源が求められます。この急速な転換は自家用車に依存する多くのアメリカ人には夢物語のように聞こえるでしょう。
しかし北米以外の主な経済先進国の国々は、少なくとも時速186マイルで移動する電気駆動の列車があり、高速鉄道の標準定義に合致しています。それは可能なことなのです。その他地域ではフランスが短距離航空輸送の国内便禁止を去年5月に発効し、欧州連合の国々は大陸の主要都市のほとんどをつなぐために高速鉄道網を拡充し続けています。
日本と中国は時速200マイル以上で移動する列車に適応する高速用レールを26,000マイル設置し、同様の努力をしています。一方米国は自身の高速鉄道網拡充にかなり遅れを取っています。もっと手際よく速やかに行わなければなりません。
もちろん高額の費用が掛かります。しかし子供の将来を護るためならどれくらい費やせるでしょうか。高速鉄道は、気候変化への世界的救済策の基本的構成要素です。それは私たちが行わなければならない投資です。そして地球の大気中の二酸化炭素排出量を削減することで、その投資は新たな雇用を創出し、サプライチェーンの効率性、経済競争力の向上につながるでしょう。
私は2月に85歳になり、気候変動活動家の次世代に道を譲りつつあります。彼らの何人かには幸いロータリーを通し導く機会を得ました。しかし4人の孫や他の全ての若者たちのため、明るく緑あふれる将来を創り出す決意を更に強くしています。彼らは絶滅危機にある地球を受けつぐ運命にあるからです。
この先10年以内に、愛すべき若者達は気候変動危機を改善する為できる限りのことをしたかどうか尋ねることでしょう。私は迷いなくイエスと答えます。
あなたなら何と言うでしょうか。
サンホセRCメンバーでパスト会長ロッドディリドン Sr.は、米国高速鉄道連合の共同議長、カリフォルニア高速鉄道公社名誉理事長でもあります。
翻訳 津坂守英@名古屋城北
名古屋城北ロータリークラブ NAGOYA JYOHOKU 国際ロータリー第2760地区
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